2025年10月14日、サッカー日本代表が強豪ブラジルを3-2で下すという歴史的快挙を成し遂げました。過去の対戦成績で一度も勝てていなかった相手からの金星に、日本中が歓喜に沸きました。
「格上のブラジルに勝ったことで、FIFAランキングのポイントはどれくらい獲得できて、順位はどう変わるのだろう?」
同時に、多くの方がこう思ったのではないでしょうか?
FIFAランキングの計算方法は少し複雑に見えるかもしれませんが、実はいくつかの簡単な要素に分解できます。この記事では、その複雑な計算方法を、やさしく誰にでも理解できるように一つひとつ丁寧に解説していきます。
- FIFAランキングとは?なぜ重要なのか
- 現在のポイント計算方法の全貌(2018年改訂版)
- 親善試合とワールドカップでのポイントの大きな違い
- 日本がブラジルに勝利して獲得した実際のポイントについて
FIFAランキングとは?サッカー界での重要性をわかりやすく解説

FIFAランキングとは各国のナショナルチームの強さを客観的な数値で示した「成績表」です。そして、その順位が最も重要になるのが、4年に一度のFIFAワールドカップの組み合わせ抽選会なのです。
このランキングは、国際サッカー連盟(FIFA)が1993年から発表している男子ナショナルチームの公式な順位付けです。FIFAに加盟している全ての国と地域が対象となり、代表チーム同士の公式試合である「国際Aマッチ」の結果に基づいてポイントが変動し、順位が決定されます。
では、なぜランキングで上位にいることがそれほどまでに重要なのでしょうか?
最大の理由は、ワールドカップ本大会のグループステージ組み合わせ抽選で使われる「ポット分け」にあります。
ワールドカップ本大会に出場する国は、抽選前に「ポット」と呼ばれるグループに振り分けられます。このポット分けは、基本的にFIFAランキングの順位に基づいており、ランキング上位のチームから順に「ポット1」「ポット2」「ポット3」「ポット4」と割り振られていきます。

ポット1に入ることには大きなメリットがあります。
抽選のルール上、同じポットに入ったチームはグループステージで対戦することはありません。つまり、ポット1に入ることができれば、アルゼンチン、フランス、ブラジルといった他の超強豪国との対戦をグループステージでは確実に避けられるのです。これにより、決勝トーナメント進出の可能性が格段に高まります。
この優位性は、一度きりのものではありません。ワールドカップで勝ち進むことで、さらに多くのポイントを獲得し、次の大会でも高いランキングを維持しやすくなるという「成功の良い循環」を生み出します。
日本代表が目標として掲げる「ベスト8以上」を達成するためには、ランキングを上げて有利な組み合わせを引き寄せることが、非常に重要な戦略となります。
最新の順位表につて別記事で詳しく紹介しているのでこちらの記事もご確認ください。
【初心者にもわかりやすい】FIFAランキングのポイント計算方法

現在のFIFAランキングは、2018年に導入された「SUM方式」という計算方法で算出されています。これは、試合前の保有ポイントに、試合の結果によって得られるポイントを足したり引いたりする、非常にシンプルな仕組みです。
試合後のポイント = 試合前のポイント + I × (W – We)
この式さえ理解すれば、FIFAランキングの全てがわかります。これから、式の中の各項目「I」「W」「We」を一つずつ解説していきます。
「イロレーティング(Elo rating system)」
現在の計算方法は、2018年のロシアワールドカップ後に変更されたものです。
それ以前は過去4年間の成績を平均する方法が採用されていましたが「ランキングを維持するために、ポイントが下がるリスクのある親善試合を避ける」といった戦略的な行動が可能になるという問題点がありました。
この問題を解決するため、現在の方式ではチェスなどの二人対戦ゲームで実力評価に使われる「イロレーティング(Elo rating system)」という考え方が導入されました。
このシステムは、試合ごとの結果がダイレクトにポイントに反映されるため、より公平で、その時点でのチームの実力を正確に表すことができるとされています。
I – 試合の重要度
全ての試合が同じ価値を持つわけではありません。例えば、親善試合よりも、国中の期待を背負って戦うワールドカップ本大会の試合の方が、はるかに重要度が高く設定されています。この試合の重要度を示す係数が「I(試合の重要度)」です。
具体的には、以下のように定められています。
| 係数(I) | 試合の種類 |
|---|---|
| 60 | W杯本大会(準々決勝~決勝) |
| 50 | W杯本大会(グループステージ~R16) |
| 40 | 大陸選手権(準々決勝~決勝) |
| 35 | 大陸選手権(グループステージ~R16) |
| 25 | W杯・大陸選手権予選、ネーションズリーグ決勝T |
| 15 | ネーションズリーグ(グループステージ) |
| 10 | 国際Aマッチ期間内の親善試合 |
| 5 | 国際Aマッチ期間外の親善試合 |
この表を見れば、ワールドカップ本大会の試合がいかに大きなポイントを動かすか、一目瞭然です。親善試合の勝利とワールドカップでの勝利では、ランキングに与える影響が全く異なることがわかります。
W – 試合の結果
次に、試合の結果に応じて与えられる係数が「W(試合の結果)」です。勝ち、引き分け、負けで明確に数値が定められています 。
| 係数(W) | 試合結果 |
|---|---|
| 1 | 勝利(90分または延長戦) |
| 0.75 | PK戦で勝利 |
| 0.5 | 引き分けまたはPK戦で敗北 |
| 0 | 敗北(90分または延長戦) |
PK戦での勝利は通常の勝利よりも少し低い「0.75」PK戦での敗北は引き分けと同じ「0.5」として扱われる点が特徴です。
We – 試合の期待結果
ここがFIFAランキング計算の最もユニークで重要な部分です。「We」は、両チームの試合前のポイント差から計算される「勝利の期待値」のことです。

勝利の期待値?
難しく考える必要はありません。簡単に言えば、こういうことです。
- 格上のチームと対戦する場合:勝つことはあまり期待されていないので「We」の数字は小さくなります。
- 格下のチームと対戦する場合:勝つことが期待されているので「We」の数字は大きくなります。
そして、この「We」が、ポイントが大きく動く仕組みの鍵を握っています。
もう一度、計算式の核となる部分 I × (W – We) を思い出してください。
今回、日本(格下)がブラジル(格上)に勝ったケースでは、日本の「We(勝利期待値)」は非常に小さい数字です。そのため、「W(勝利=1) – We(小さい数字)」の結果は1に近い大きな数字になります。これに試合の重要度「I」を掛けることで、獲得できるポイントが非常に大きくなるのです。
図の挿入(期待値が低い、高いで獲得できるポイントが異なる)
【ケーススタディ】カタールW杯のモロッコ代表に学ぶポイントの推移

この計算方法が実際にどれほどランキングに影響を与えたか、2022年カタールワールドカップで歴史的な快進撃を見せたモロッコ代表を例に見てみましょう。
カタールワールドカップ開幕前、モロッコのFIFAランキングは22位でした。グループステージでは、ベルギー(当時2位)、クロアチア(当時12位)といった、いずれも格上の強豪国と同組でした。
しかし、モロッコは下馬評を覆す快進撃を見せます。グループステージでベルギーを破って首位通過すると、決勝トーナメントではスペイン(当時7位)、ポルトガル(当時9位)を次々と撃破し、アフリカ勢として史上初となるベスト4進出という快挙を成し遂げました。
この躍進の裏で、モロッコのFIFAポイントは爆発的に増加しました。その要因は、まさにこれまで解説してきた計算式の仕組みにあります。
- 対戦相手がすべて格上だったため、「We(勝利期待値)」が低く、
(W - We)の値が常に大きかった - 試合の舞台がワールドカップ本大会だったため、「I(重要度)」が50または60という最大級の値だった
この2つの要素が掛け合わさり、1試合勝利するごとに莫大なポイントを獲得していったのです。その結果、大会終了後に発表されたランキングで、モロッコは22位から一気に11位へとジャンプアップしました。
【歴史的勝利】日本、ブラジル撃破で獲得したポイントは?

お待たせしました。それでは、今回の歴史的勝利で日本代表がどれくらいのポイントを獲得したのか、実際に計算してみましょう。
- 試合:2025年10月14日 国際親善試合 日本 3-2 ブラジル
- 日本:19位、1640.47ポイント
- ブラジル:6位、1761.60ポイント
Step 1: 各係数を当てはめる
- 日本の試合前ポイント : 1640.47
- 試合の重要度 (I): 親善試合なので 10
- 試合結果 (W):日本の勝利なので 1
Step 2: 勝利期待値 (We) を計算する
- 両チームのポイント差 (1640.47 – 1761.60) = -121.13
- このポイント差を基に計算すると、日本の勝利期待値 We = 0.33
Step 3: 公式に当てはめて獲得ポイントを算出
獲得ポイント = 10 × (1 – 0.33)=6.7
この計算により、日本はブラジルへの歴史的勝利で +6.7ポイント を獲得したことがわかります。日本の合計ポイントは1647.17となりました。
これにより、試合前は18位だったセネガル(1645.23ポイント)を上回り、17位のスイス(1648.3ポイント)に肉薄することになります。同期間の他国の試合結果にもよりますが、FIFAランキングが1つ上昇し、18位になる可能性があります。
比較:もしこれがワールドカップ本大会だったら?
では、もしこのブラジル戦が親善試合ではなく、ワールドカップのグループステージだった場合はどうなっていたでしょうか。ここで重要になるのが、先ほど解説した「試合の重要度(I)」です。
- Iの値が、10 から50 に変わります
- 獲得ポイント = 50 × (1 – 0.33)
- 獲得ポイント = 50 × 0.67 = 33.5 ポイント
なんと、親善試合の5倍ものポイントを獲得できる計算になります。もしワールドカップ本大会でブラジルに勝利すれば、一気に30ポイント以上を獲得し、ランキングを大幅にジャンプアップさせることが可能です。
まとめ:FIFAランキングの計算方法を知れば代表戦がもっと面白くなる
今回は、FIFAランキングのポイント計算方法について、そして日本代表がブラジルに勝利したことで得た実際のポイントについて詳しく解説しました。一見すると複雑に見えるランキングも、その仕組みを理解すれば、今後のサッカー観戦がより一層深みを増すはずです。
最後に、この記事の要点をまとめます。
- FIFAランキングはW杯の組み合わせに直結する非常に重要な指標
- 現在の計算方法は、試合前のポイントに増減分を足し引きする「SUM方式」
- 計算式は試合後のポイント = 試合前のポイント + I × (W – We)
- 「試合の重要度(I)」と「勝利期待値(We)」がポイントの増減に大きく影響する
- 日本はブラジルに勝利したことで +6.7ポイント を獲得し、ランキング上昇が期待される
これからの日本代表の試合を見る際には、ぜひ対戦相手のランキングにも注目してみてください。「この試合に勝てば、どれくらいポイントがもらえるかな?」と考えながら応援すると、新たな楽しみ方が見つかるかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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